『風景への目覚め』II章 人間意識の進化を反映する風景(内容紹介)

『風景への目覚め』第2章紹介

ヨヘン・ボッケミュール氏の『風景への目覚め』第二章は、人類の意識進化と風景の変遷を対応させた壮大な論考です。古代の自然との一体性から中世の内外分離、近世の世界発見、近代の技術信仰、そして現代の完全な疎外まで、各時代の風景が人間意識の状態を映し出していることを示しています。特にリルケのヴァレーでの体験は、分離を経験した現代人だからこそ可能な「参与的認識」の例として重要です。古代ローマの「Genius Loci(場所の個性)」概念の現代的復活も提唱され、技術的解決を超えた意識変革による自然との新しい関係構築の可能性を探っています。

2025年前期定期講座日程

2025年前期の定期講座日程は 以下のとおりです. 01/15 だれでもわかる星空の基本 02/05 透視図法で正確な立方体を描こう 02/19 カメラオブスキュラの制作 03/05 ピンホールカメラやレンズでなぜ像がう … 続きを読む

後期観察会のご案内

IMG:http://i-spiral.net/wp-content/uploads/2024/10/Obsidian-Adventure.png 2024年定期講座 後期の自然観察会のご案内です. テーマ:黒曜石を採り … 続きを読む

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シュタイナーの『ニーチェ』と『自由の哲学』

シュタイナーの『ニーチェ』(1895)は、キリスト教的理想主義への挑戦者としてのニーチェを論じ、「超人」概念を自己実現と道徳的創造の体現として解釈しています。一方、『自由の哲学』(1894)は思考を通じた世界認識と道徳的直観に基づく真の自由を探求しています。両著作は近代思想への批判という共通基盤を持ちながら、『ニーチェ』がニーチェ思想の批判的分析であるのに対し、『自由の哲学』は独自の認識論・倫理学体系の構築を目指しています。シュタイナーはニーチェの「力への意志」を思考による自己実現として再解釈し、後のアントロポゾフィー発展への重要な基礎を築きました。

都市伝説とシュタイナー

近年の都市伝説ブームは、経済不安やパンデミックなどの具体的要因より、近代的価値観に対する漠然とした違和感に根ざしています。不確実な時代に共通の話題で繋がりたい心理と、SNSなどのメディアが結びついて雪だるま式に拡大しました。都市伝説には時代批判的動機も含まれますが、エンターテイメントとして機能し根本的不安は解消されません。この界隈でシュタイナーの名前も登場するようになり、興味深い現象となっています。消費対象としてブーム化すると誤解される危険性がある一方、批判的思考で接すれば学びにもなり得ます。重要なのは一定の距離を保つことです。

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Margaret Colquhoun 氏について

Margaret Colquhounは『New Eyes for Plants』の著者で、ゲーテ的自然科学に基づく植物観察法の実践者です。スコットランドでLife Science Trustを設立し、Pishwanton Woodsをゲーテ的観察の研究センターとして運営しました。彼女の著書は季節を通じた植物観察と描画の実践的ガイドで、科学とアートを融合させたホリスティックなアプローチを提唱しています。現在、彼女の研究はRuskin Mill Trustに引き継がれており、同団体はジョン・ラスキンとシュタイナーの思想を基盤とした特別支援教育を行っています。これは近代デザイン運動の源流とも交錯する興味深い系譜を示しています。

反射する光と透けた光 〜緑陰の心地よさ

この記事は、葉の表と裏を観察することで意識のモードチェンジを体験する、ゲーテ的自然観察の実践例を紹介しています。光の反射時は形状認識に、透過時は色彩体験に意識がシフトし、後者では空間的認識が溶解して心地よさが生まれます。このような観察を通じて、私たちが無意識に行っている意識の使い分けを自覚することができます。透過光による空間性からの解放は、ジェームズ・タレルの色彩空間にも通じる現象として言及され、日常の自然観察が芸術体験と結びつく可能性を示唆しています。

表象、イントゥイシオン、デザイン

シュタイナーの「表象」は「死んだ概念」として否定的に捉えられ、これに対して「イマジネーション」「インスピレーション」「イントゥイシオン」という三段階の生きた認識力が提唱されています。これらは観察力の鍛錬、思考の沈静化、道徳的成長を通じて育まれます。特にイントゥイシオンは個別的な真実の認識であり、普遍的絶対真理ではありません。興味深いことに、デザインプロセスにもこの三段階が見出せます。既存の表象を解体・再検討し、直観的な「腑落ち」を経て新たな形を生み出すプロセスは、秘教的概念を日常的に理解する道筋を示しています。

四つの気質とユーモアのかかわり

シュタイナーの四つの気質論は古代ギリシアの四体液説に由来し、2000年以上支持された医学・気質理論の系譜上にあります。「ユーモア」という言葉も体液を意味する「humor」から発展し、気質の偏りが生む滑稽さを表すようになりました。気質論は他者理解のツールですが、ステレオタイプが破られる瞬間は自己理解の契機ともなります。重要なのは温かい愛情を基盤とすることで、それがあってこそ違いを喜ばしいものとして受け入れ、ユーモアを通じた豊かな学びが可能になります。

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学びの原像 〜ヨヘン・ボッケミュール氏の思い出

ゲーテ的自然学を現代に体現する植物学者ヨヘン・ボッケミュール氏との出会いは、らせん教室に深い印象を残しました。氏の穏やかな物腰や口調には、長年の植物観察と認識の深さに照応した洗練と成熟が表れていました。特に自然を認識する際の愛情深い姿勢が印象的で、学びとは知識を超えた人格的成熟への道であることを示してくれました。その美しさに似た完成度は、学問的探求が人間性の深化と不可分であることを物語っています。