“光に似た何か” のおおもと

野外観察会で “泉” を訪れました.
まだ印象が鮮やかなうちにメモに残しておきたいと思います.

訪れたのは耳納(みのう)連山の麓にある古寺.

名前を清水寺といい、その敷地の一角に、
清水湧水(きよみずゆうすい)があります.

この地域では古くからよく知られていて、
環境庁の名水100選にも選定されています.
私たちが訪れた時も、年配の男性が「コーヒーを淹れるのに使うんだよ」と
ポリタンクに水を汲み、何度も車との間を往復していました.

 
泉のほとりに立つとそこは木立に囲まれた静かな世界で
光に似た何かがうっすらと満ちているような気がしました(*個人の印象です).

水はあくまで透明で、底まではっきり見通せます.
透明すぎて上の写真ではわかりにくいのですが、
下の方の灰色ぽいエリアは泉なんです.

目に見えて水が湧き出ている様子はなく、水面はとても穏やか.
時折、アメンボが作る波紋がゆるやかに広まり、
水面の静けさをいっそう際立たせています.

ですがその澄んだ静けさは、やはり湧き出る水がもたらすもの.
ただの池であれば、水は藻類などの微生物などで
すぐに濁ってしまうことでしょう.

水が湧き、どこかへ流れ出る.
泉ならではの水の動きがあるからこそ実現している美しさなのです.

 
実際、泉の水はお寺の外の水路に導かれ、
周囲の水田に引き込まれていました.
吐水口からは力強く水が流れ出しています.
それもそのはずこの湧水、実に一日に700トンもの水が湧いているのだそうです.

1トンは水で言ったら1000リットルですから、ものすごい量です.
「汲めども尽きぬ」という表現がありますが、まさにそんな感じですね.

 
この無限にも思える大量の水はどこからもたらされているのか?
そう考えると、背後にそびえる耳納(みのう)連山に気付かされます.
清水湧水の両翼に長々と展開するあの壁のような山並みこそ、
この泉の力の源泉なのでしょう.

山々に降った水が地中に染み込み、長い時間をかけて伏流となり、
一方では濾過され、もう一方では地中のミネラルを溶かしこみながら
この泉の底からあらわれて、再び日の光を浴びる.
私たちの知らないところで粛々と営まれているこの水の動きを思うと、
目の前の泉の静けさのなかに、みなぎる力を感じざるを得ません.

私が最初に感じた “光に似た何か” の正体は、
もしかするとこんなこととも関係していたのかも知れないな
などと思いました.

このあと、滝の観察をしたのですが、
それはまた別の機会に.
水の動き〜泉と滝

 
清水湧水の場所はこちらです.
駐車場もあり、行きやすいと思います.
私たちが訪れた時は農作物の無人販売所もありました.